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褥瘡の治療について

褥瘡だと思ったら何科に行けば良いのでしょうか?
褥瘡の治療とはどのようにするのでしょうか?
褥瘡は治るのでしょうか?
治療方法はどのようにするのでしょうか?
 ┗ 1.ぬり薬 2.ドレッシング 3.消毒・洗浄 4.手術


褥瘡だと思ったら何科に行けば良いのでしょうか?

一般社団法人日本褥瘡学会には、特定の診療科の医師のみではなく、皮膚科、形成外科、外科、内科、リハビリテーション科、整形外科など、様々な診療科の褥瘡診療を専門とする医師が会員として参加しています。医師の他にも、看護師、理学療法士、作業療法士、栄養士、薬剤師など多くの職種が参加し、互いに連携しています。
国内の多くの医療施設に褥瘡対策チームが設置されており、専任の医師と専任の看護師が多職種からなるチームを取りまとめて診療にあたっています。どの診療科の医師が褥瘡を専門とし、診療を担当しているかは医療施設によって異なりますので、受診を希望する施設で確認することをおすすめします。

褥瘡の治療とはどのようにするのでしょうか?

一般社団法人日本褥瘡学会は、慣習的な診療や診療担当者の経験のみに頼るのではなく、科学的な根拠に基づく診療の実践に早くから取り組んでいます。その一環として、これまでに褥瘡診療ガイドラインと一般向けのガイドブックを編纂してきました。
褥瘡の治療は、1)保存的治療(外用薬剤(ぬり薬)や創傷被覆材(ドレッシング材))、2)物理療法、3)外科的治療(手術療法に分けられます。原則としてガイドラインに沿い、適宜アルゴリズムを使用しながら、最も適切であると判断される治療を進めていきます。

アルゴリズム

褥瘡は治るのでしょうか?

多職種の連携によるチーム医療と、ガイドラインを中心にすえた診療の実践により、多くの褥瘡が治癒するようになってきました。もちろん、患者さんの身体の状態や、褥瘡が発生した原因、損傷の深さなどによっては、簡単に治癒しないこともあります。その場合も、褥瘡が発生した原因をきちんと取り除き、科学的根拠に基づく治療を進めていくことが大切です。

治療方法はどのようにするのでしょうか?

1.ぬり薬

褥瘡に使えるぬり薬(外用剤)には様々なものがあります。創部に感染(細菌が増えて炎症が起こっている状態)がある時に使えるもの、感染が落ち着いた後に創部の治癒(肉芽形成、上皮化)を促すものや、保湿により創部を保護するものなど、その役割はさまざまです。ぬり薬は、基剤に薬効成分が溶け込んだものであり、薬効成分が重要であることは言うまでもありませんが、基剤の性質(油脂性:油分による創面の保護、乳剤性:乾燥した組織に水分を与える、水溶性:浸出液を吸収する)は、創面に大きな影響を与えますので、選択する際の大きなポイントとなります。

外用剤の軟膏基剤による分類

ぬり薬の種類は多く、実際にどのぬり薬を使えばよいか迷うところですが、医師、看護師と相談しながら、治療効果をみて判断していくとよいでしょう。以下に実際の使用例を記しますので参考にしてください。

■発赤・紫斑などが見られた場合

創面の除圧、保護が大切であり、ジメチルイソプロピルアズレンなど、創面保護効果の高い油脂性基剤の外用剤を用いてもよいでしょう。(注1)

■水疱を生じた場合

小さければ創の保護目的に酸化亜鉛、ジメチルイソプロピルアズレンなど、創面保護効果の高い油脂性基剤の外用剤を用いてもよいでしょう。(注2)非固着性の創傷被覆材を用いるか、ぬり薬を多めに塗って、交換の際、水泡を破らないことが大切です。緊満した大きなものでは、内容液を排出する処置が必要なこともありますので、早めに医師へご相談ください。

■水疱が破れたり、びらん、浅い潰瘍を認めた場合

酸化亜鉛、ジメチルイソプロピルアズレンを用いてもよいでしょう。上皮形成促進を期待して、アルプロスタジルアルファデクス、ブクラデシンナトリウム、リゾチーム塩酸塩を用いる場合もあります。(注3)

■滲出液が多い場合

滲出液吸収作用を有するカデキソマー・ヨウ素、ポビドンヨード・シュガーを用います。(注4)またデキストラノマー、ヨウ素軟膏を用いてもよいでしょう。(注5)

能動的吸水および受動的吸水する基剤のモデル

■滲出液が少ない場合

乳剤性基剤 ( O / W ) の軟膏を用います。感染創ではスルファジアン銀、非感染創ではトレチノイントコフェリルを用いてもよいでしょう。(注6)

滲出液が少ない場合の外用剤の基剤と水分含有率

■褥瘡に感染、炎症を伴う場合

感染制御作用を有するカデキソマー・ヨウ素、スルファジアン銀、ポビドンヨード・シュガーの使用が推奨されます(注7)。またフラジオマイシン硫酸塩・結晶トリプシン、ポピドンヨード、ヨウ素軟膏、ヨードホルムを用いてもよいでしょう(注8)。処置の際には創部をしっかりと洗浄することが大切です。また、適切なデブリードマン(壊死組織の除去、キズの清浄化)や抗生剤の投与が必要なことがありますので、感染を疑った場合には早めに医師、看護師へご相談ください。

キズの状態は時間と共に変化していきます。キズをよく観察し、その状態に最適なぬり薬を使えば、少しでも早くキズを治せるかもしれません。逆に、キズの状態に合わないぬり薬を漫然と使っていると、キズを悪化させる可能性もあるため注意が必要です。

注1:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.3 推奨度 C1
注2:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.4 推奨度 C1
注3:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.5 推奨度 C1
注4:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.7 推奨度 B
注5:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.7 推奨度 C1
注6:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.8 推奨度 C1
注7:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.11 推奨度 B
注8:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.11 推奨度 C1

2.ドレッシング

ドレッシング材とは、キズを覆う医療用材料のことです。キズを覆うことで、外部からの刺激や細菌の汚染などを防ぎます。非固着性(創面にくっつかない性質)のものであれば、交換の際、肉芽組織や新生表皮(再生した組織)を損傷しにくく、疼痛も少ないことから、より早い治癒が望めます。近年ではキズが治るのに最適な環境(湿潤環境)を維持することのできる、高機能なものが多く販売されています。
キズから出てくる滲出液は蛋白に富み、創傷治癒にかかわるさまざまな成分を含むため、適切な量をキズ周囲に保持することで、キズのなおりを促進することができます。ただ過度の浸潤は治癒に悪影響を及ぼす可能性があり注意が必要です。ドレッシング材は、それぞれに浸出液を吸うことのできる量、性質が異なりますので、キズの深さや浸出液の量によって様々なものを使い分けます。たとえば、滲出液が少ないびらんや浅い潰瘍では、ハイドロコロイドを使います(注7)。滲出液が多い場合には、過剰な滲出液を吸収するポリウレタンフォームが推奨されます(注2)。他にも皮下組織に至る創傷用と筋・骨に至る創傷用ドレッシング材のアルギン酸/CMC、ポリウレタンフォーム/ソフトシリコン、アルギン酸塩、アルギン酸フォーム、キチン、ハイドロファイバー®、ハイドロファイバー® / ハイドロコロイド、ハイドロポリマーを用いてもよいでしょう(注3)。炎症や感染のあるキズには、ぬり薬を用いた治療が基本となりますが、軽度の感染創には、銀イオンの含まれた製品(銀含有ハイドロファイバー®、アルギン酸Agなど:注4)を用いて治療をおこなうこともあります。

ドレッシング材の種類と機能

ドレッシング材を適切に使用すれば、創部の治癒は促進されますが、ドレッシング材の選択、交換の時期、外用剤との使い分けなど、判断に迷うことも少なくありません。ドレッシング材は、キズをよく観察し、医師、看護師と相談のうえ使用してください。

注7:褥瘡予防・管理ガイドライン第3版 CQ2.5, 2.8 推奨度 B
注1:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ2.5, 2.8 推奨度 B
注2:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ2.7 推奨度 B
注3:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ2.7 推奨度C1
注4:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ2.9 推奨度 C1

3.消毒・洗浄

治療において大事なことのひとつに、きずとその周りをきれいにすることが挙げられます。きずに汚れやばい菌がたくさんくっついている状態では、うまく治りません。そのため、きずとその周りの汚れやばい菌を洗い流してしまうことが大事です。洗い流すにあたっては、『十分な量の生理食塩水または水道水を用いて洗浄する』(注10)ことが推奨されています。

感染・炎症を伴う褥瘡洗浄方法

水道水と聞くと不安に思われる方もおられるかもしれませんが、きれいな水道水であれば特に問題はありません。また、せっけんを用いて洗っても構いません。ただし、せっけんがきずに残らないようにしましょう。洗う頻度は1日1回程度でよいことが多いですが、きずの状況によってさまざまです。
ばい菌を減らす目的で、昔はきずに対して消毒を頻繁に行っていました。褥瘡治療の研究データの中にも、消毒液のひとつであるポピドンヨードで消毒した場合のほうが治療経過がよいとする報告がいくつかあります。しかし、ほとんどの消毒液はばい菌だけでなく人間の細胞に対しても毒性をもっています。また、洗浄のみでも十分にばい菌を減らすことが出来ます。これらのことから最近消毒は『通常は必要ない』(注11)とされております。ただし、『明らかな創部の感染を認め滲出液や膿苔が多いときには洗浄前に消毒を行ってもよい』(注11)と言われています。

創部の消毒

注10:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.9 推奨度 C1
注11:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ1.10 推奨度 C1
滲出液:きずからにじみ出てくる透明な液体。
膿苔:簡単にとれない、こびりついた膿。

4.手術

手術には、大きく分けて外科的デブリードマンと再建術があります。外科的デブリードマンとは、日々のぬり薬・ドレッシングなどを用いた治療だけではとれないような、きずにしっかりくっついている壊死組織(皮膚やその下の組織の死がい)を、メスなどを用いて切り取ってしまうことです。

メンテナンスデブリードマン

壊死組織があるきずは非常に治りにくい(あるいは治らない)ので、壊死組織の状態に応じて外科的デブリードマンに踏み切る必要があります。『深さが皮下組織以上に及ぶ』か否かや、『局所の感染巣の局在、壊死組織の量および拡大範囲、創部の血行状態、痛みへの耐性に応じて』外科的デブリードマンをするかしないか決めます(注12)。
再建術とは、患者さん自身の皮膚などを用いて、きずを閉じてしまう手術です。ほかの治療に比べて、自身の身体の一部を犠牲にすることや麻酔を必要とするなど患者さんへの負担が大きいため、行なうか否か、どのような再建術を行なうかについて十分な検討が必要です。基本的には、患者さんの術後の暮らし方・あり方などを十分に考慮した上で、①ぬり薬やドレッシングによる治療を行っても治りそうにない、あるいはかなりの期間が必要と思われる、②きずが骨まで達しており、その骨の状態が良くない(骨髄炎になっている)、などのきずに関する判断材料(注13)および全身の状態をもとに決めます。再建術後にすぐ再発しては元も子もありませんので、再発予防について、手術の前の段階から十分に対策を練ることがとても大事です。

褥瘡好発部位の皮弁採取部

褥瘡好発部位の皮弁採取部

注12:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ3.4 推奨度 C1
注13:褥瘡予防・管理ガイドライン第4版 CQ3.5 推奨度 C1

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