一般社団法人 日本褥瘡学会

褥瘡評価ツール 改定DESIGN-R®2020

DESIGNは日本褥瘡学会学術教育委員会が開発した褥瘡状態判定スケールで、2002年に日本褥瘡学会が発表しました。褥瘡の重症度を分類するとともに、治癒過程を数量化することを目的に開発されました。DESIGNは、Depth(深さ)、Exudate(滲出液)、Size(大きさ)、Inflammation/Infection(炎症/感染)、Granulation(肉芽組織)、Necrotic tissue(壊死組織)、および末尾のPocket(ポケット)の7項目からなり、頭文字を使ったわかりやすい表記と、厚生労働省の褥瘡対策未実施減算と相まって褥瘡評価スケールとして広く使用されるようになりました。

その後、それぞれの項目の重みづけがエビデンスをもとに検討され、2008年にDESIGN-R®として公表されました(RはRatingの意味)。深さ以外の6項目により褥瘡の重症度を絶対的に評価し、褥瘡の治癒過程を定量的に比較評価できるようになりました。さらに2013年の改定では、診療報酬の入院基本料において褥瘡の状態評価にDESIGN-R®が用いられることになったことを受け、急性期であっても評価できるよう説明文が追加されました。これらの改定を通じてDESIGN-R®は、国内はもちろん、世界的にも高く評価されるようになりました。

その後の新しい知見として、急性褥瘡における「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と「臨界的定着疑い」が項目候補としてあがりましたが、これらの現象をDESIGN-R®にどのように落とし込んでいくかについて議論がありました。これらの現象については、いまだわかりやすい判定方法とエビデンスが少ない状況です。そこで今回の改定では、「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と「臨界的定着疑い」を項目として追加することのみといたしました。

今回の改定は、初回の策定も含めると4回目となり、「深部損傷褥瘡(DTI)疑い」と「臨界的定着疑い」が提起されるなど挑戦的な取り組みとなりました。将来的にはエビデンスに基づく点数の再定量の検討も必要であり、今後も臨床現場で使いやすく、褥瘡の評価と治癒予測に優れたスケールを目指してさらに改定を重ねていく予定です。引き続き皆様のご協力とご意見をお願いいたします。

最後に、DESIGN策定当初より中心メンバーとして活躍され、今回の改定においても意見構築委員として貴重なご意見をいただいた宮地良樹先生と真田弘美先生に感謝するとともに、今回改定のワーキンググループの方々と委員長の田中マキ子先生のご尽力に深く感謝いたします。

2020年12月

一般社団法人 日本褥瘡学会 理事長
坪井良治

「改定DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント」(関連書籍)

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