一般社団法人 日本褥瘡学会 理事長
藤田医科大学保健衛生学部看護科
教授
藤田医科大学社会実装看護創成研究センター
センター長
須釜 淳子
このたび、2025年8月の社員総会後の理事会にて、一般社団法人日本褥瘡学会理事長を拝命いたしました。これまで日本褥瘡学会を牽引されてこられました諸先生方が大切に築き上げた本学会の舵取りを引きつづき担うことになり、改めて身の引き締まる思いです。学会の発展に一層尽力する所存です。
本学会は、褥瘡や創傷管理に関する教育、研究、専門知識の増進普及を図り、褥瘡の管理(予防、治療およびケア)の充実を通じて、医療、ならびに福祉の向上を目的として活動を続けて参りました。前理事会では、日本褥瘡学会25年の軌跡(学会誌27巻2号掲載)をまとめ、学会創設からこれまでの学会活動の変遷を振り返り、今後の課題を明らかにしました。今期理事会では、以下の重点目標を掲げ取り組んで参ります。
- 褥瘡の管理の均霑化
- Unavoidable pressure injury (UPI; 不可避褥瘡)に関するコンセンサス
- 褥瘡の管理に関する研究によるエビデンス創出の再興
- 地域包括ケアにおける褥瘡対策チームの拡大
- 持続可能な褥瘡実態調査システムの構築
地域包括ケアが進む中、これまで日本褥瘡学会が関与してこなかった領域として、地域 医療支援、在宅療養支援などを担う中小規模病院があります。これらの領域での褥瘡の管理の実状を明らかにし、その領域に応じた褥瘡管理を検討し、実装していきます。
2019年から取り組んできたテーマです。「UPIとは何か?」のコンセンサスを得るのが難関であり、継続課題となっています。再度論点を整理し、エビデンスを積み重ねながら「UPIとは何か?」の議論を深め、コンセンサスを得ることを目指します。
学会設立と同時に編集委員会が設立され、翌年には日本褥瘡学会誌創刊号が発刊されました。褥瘡の管理のエビデンスを集積する重要な学術雑誌であり、これまで独創性のある原著論文を多数掲載してきたと自負しています。しかし、近年、原著論文の掲載数は伸び悩んでいます。編集委員会、Award・Grant選考委員会、学術集会、地方会学術集会などが、組織横断的に日本褥瘡学会誌への論文投稿を推奨する仕組みを創り、論文掲載数の増加を図ります。
多職種から構成されるチームによる褥瘡の管理を医療現場で実践すべく、多くの会員が努力をしてきました。薬剤師、管理栄養士・栄養士、理学療法士、作業療法士の方々の専門性は、褥瘡対策の幅を広げます。引き続き会員増に向けた活動を継続していきます。さらに介護が必要な超高齢者が増加する中、介護職者の褥瘡の管理に果たす役割は大きいと考えます。介護職者を含めた褥瘡対策チームの在り方を検討して参ります。
多くの会員のボランティアで支えられ継続してきた活動として、褥瘡実態調査があります。この調査は、日本の褥瘡医療の質を構造、過程、成果の3側面から評価する貴重なものであり、それらの推移を把握することは、学会の使命の一つであると考えます。会員の負担を低減し、持続可能な褥瘡実態調査のシステムを構築して参ります。
最後になりましたが、これまで褥瘡学会は、「患者中心の褥瘡の管理」を理念とし、多職種が一つのチームとなって前進してきました。この姿勢はこれからも変わることはありません。学会の活動を担っていただく会員の皆様のご協力とご支援をお願い申し上げます。
歴代理事長
| 任期 | 氏名 |
|---|---|
| 1期 1999年 ~ 2002年 | 大浦 武彦 |
| 2期 2002年 ~ 2005年 | |
| 3期 2005年 ~ 2008年 | 森口 隆彦 |
| 4期 2008年 ~ 2011年 | 宮地 良樹 |
| 5期 2011年 ~ 2015年 | 真田 弘美 |
| 6期 2015年 ~ 2017年 | 川上 重彦 |
| 7期 2017年 ~ 2019年 | |
| 8期 2019年 ~ 2021年 | 坪井 良治 |
| 9期 2021年 ~ 2023年 | 館 正弘 |
| 10期 2023年 ~ 2025年 | 須釜 淳子 |